病院薬剤師で働きたいと考えている人は、次の疑問があります。
はてな
病院ごとで病院薬剤師の仕事に違いがあるか?
就職活動前に病院ごとの薬剤師の特徴を知りたい?
この疑問、悩みに回答します。
この記事の信頼性
薬剤師の勤め先によって、病院と調剤薬局、ドラッグストアなどと大きく分けられます。
このように「病院薬剤師」と大きくまとまられがちですが、その病院ごとによって勤務状況が大きく異なります。
この点を理解してないと、「あれ?思っていたのと違う」、「病院薬剤師はこんなはずじゃなかったのに・・」と、ギャップに苦しんでしまいます。
この記事では、そのようなギャップに苦しむことがないように、病院の規模、特徴に応じた業務形態のおおまかな特徴を紹介してます。
最後まで読んでいただくと、病院ごとの薬剤師業務が把握することができ、就職時、転職時の病院選びの参考になります。
病院の規模、形態によって大きく仕事が異なる
病院薬剤師の仕事については、「病院薬剤師の仕事って何?薬剤部長が17個のお仕事教えます」で説明しました。
ただ病院薬剤師なら、この仕事をすべて行えるわけではありません。
病院の規模、特徴によって大きく異なります。
この記事では病院の規模、特徴を次にあげる項目ごとに分類し、それぞれの病院での薬剤師の仕事内容を説明します。
- 大学病院
- 特定機能病院
- 国立病院機構
- 公立病院
- 大規模病院
- 200床以上400床未満
- 200床未満
では、始めます。
大学病院
大学病院には国公立大学、私立大学がありますが、基本的な業務は変わりません。
基本的な業務というのは、「病院薬剤師の仕事って何?薬剤部長が17個のお仕事教えます」で説明した業務。
これはすべて行っています。
それ以外の細かい点については、国公立、私立とに分けて説明します。
国公立大学病院
基本的に激務です。
定時に帰宅っていうことは、まずないと考えてください。
理由として国公立大学病院は、病院であると同時に、研究・教育機関となってます。
したがって通常業務以外にも、様々な研究・教育を行っていかなければなりません。
しかも地域を代表する病院のプライドを持って、高い水準の研究・教育を行う必要があります。
また最近は厚労省より「高度薬学管理機能」をもった薬局を増やす方針が出されています。
そのため調剤薬局など薬薬連携をはかるための、実習、教育も必要となってます。
さらに国公立大学病院は、その都道府県の核となる病院でもあるため、各県病院薬剤師会の業務も担当することが非常に多いです。
このように国公立大学病院は、薬剤師業務以外の業務が多い(研究・教育は業務扱いにならず、自己研鑽扱い)ため、凄くハードです。
またさらに大変なのが、薬学部5年生の学生実習。
薬学部が自前にある大学病院はもちろん、その県に私立薬学部が存在すると学生を受け入れることが非常に多いです。
そしてその期間も長い。
参考)一般社団法人 薬学教育協議会:令和2年実務実習実施日程
すべての期間で薬学部生がいるかどうかは、その大学薬学部との契約によりますが、まあ多くの人数がやってきます。
そして学生実習の準備、指導などに多くの時間がさかれます。
これにより自分の業務そのものが後回しになり、残業がかさみます。
もちろん救急等もありますので、当直、夜勤、休日勤務は当然あります。
私立大学病院
私立大学病院も国公立大学病院と同等で、研究・教育機関も兼ねているので、薬剤師業務以外の業務が多くなります。
学生実習に対しては、自前の大学に薬学部がある場合は非常に大変です。
ものすごく多くの薬学部5年生が実習にやってきます。
先ほど示した実務実習実施日程のすべての期間で学生が常にいる状態になります。
薬剤部員よりも学生の方が多いことも・・・
なぜ自前の大学に薬学部があると、学生実習が多く来るのかと言うと、自前の大学病院の場合、薬学部が病院に払う実習負担金が抑えられるからです。
まあしょうがないですね。
薬学部がない私立大学病院でも、首都圏、関西圏など私立大学薬学部が多い地域では、多くの学生が実務実習にやってくることは覚悟してください。
特定機能病院
特定機能病院は平成29年4月時点で85病院あり、その多くは大学病院となってます。
大学病院以外で特定機能病院となっているのは次の通り
- 国立がん研究センター東病院
- 国立がん研究センター中央病院
- がん研究会有明病院
- 国立国際医療研究センター病院
- 静岡県立静岡がんセンター
- 国立循環器病研究センター
- 大阪府立病院機構大阪国際がんセンター
言わずもがな、これら病院も研究・教育機関を兼ねてます。
よってこちらも激務です。
ただ大学病院よりも専門性が高いのが特徴です。
国立病院機構
特定機能病院の国立がん研究センター中央病院などは国立研究開発法人で、国立病院機構は、独立行政法人であるため別組織です。
基本的に、旧国立○○病院と呼ばれていた病院は、国立病院機構と思ってください。
その国立病院機構の病院は全国に137あり、それぞれ各県の中核を担う病院となってます。
ただ薬剤師の業務内容に関しては、その病院の薬剤師数によって大きく異なります。
薬剤師数が多い病院では、薬剤師の業務は多種多様になりますが、薬剤師数が少ない場合は、入院患者の調剤、薬剤管理指導など業務が絞られます。
そして国立病院機構は転勤があります。
特に出世して薬剤部長になるためには。
転勤は基本的には、東北なら東北、関東なら関東となりますが、場合によってはそれ以外もあります。
だいたい3年~7,8年のサイクルで転勤があると考えたほうが良いです。
ただもちろん結婚している場合など、家庭状況はある程度考慮されます。
公立病院
県立、市立病院などです。
こちらもその病院の機能が、専門的なのか、総合型なのかによって内容が変わってきます。
例えば、慢性期療養型に特化した公立病院ですと、薬剤師の人数は少ないですが、急患対応がほとんどないため、当直業務などがなくなります。
ただ注意したいのが、こちらも転勤があること。
県に複数、県立病院がある場合は、病院間の転勤が発生します。
例えば岩手県の場合は、県立病院が20病院も。
地域性はある程度考慮されると思いますが、その県によって異なります。
また公立病院は、公務員試験を合格して採用になるケースがほとんどなので、県の薬務課など病院を離れて内勤になる可能性もあります。
この点は十分に理解してください。
大規模病院
大規模病院、大病院の定義はハッキリしていませんが、診療報酬で紹介状無しで「大病院」を受診した時に、初診時に5,000円以上、再診時に2,500円以上の上乗せが可能なのが、400床以上となっているので、400床以上とここでは定義します。
400床以上の病院は、病院全体の10%程度です。
大規模病院になると、多くの病院が救急対応を行っているので、夜勤、当直などの業務はあります。
まだがん治療などを行っている病院も多いです。
大規模病院はDPC算定を行っている病院が多く、算定を行っている場合、患者の回転率が高くなるため、入退院患者の薬剤管理指導が多くなります。
病棟薬剤業務実施加算を算定している病院も多いのでは?
その為業務は忙しく、多岐にわたっています。
学会発表、研究活動は病院によって異なりますが、積極的に取り組んでいる病院は多いです。
学会発表に関しては、全国区の学会では出張費の関係で、発表がしにくいかもしれません。
しかし病院薬剤師会のブロック大会(関東ブロック、東北ブロックなど地域ごとにブロック別学会がある)では、移動距離も近い事から、発表する機会は多いです。
この学会発表、研究に力をいれているかどうかは、その病院の薬剤部のサイトに行くとわかります。
病院選びの際はぜひご確認ください。
大規模病院の転勤に関しては、グループで病院を持っている場合、その病院間で転勤が発生する可能性があります。
たとえば、○○労災病院を運営している労働健康安全機構では、全国の労災病院で転勤が発生します。
ただこれも転勤しなくて済む方法はあります。
ただし、薬剤部長など出世する可能性はほぼなくなります。
この点については、病院薬剤師の就職、転職の詳細ページをまとめますので、そちらをご覧ください。
200床以上400床未満
全国の病院のうち、200床以上400床未満の病院は、約22%となってます。
この200床以上400床未満の病院が、一番病院ごとで特徴が分かれてます。
例えば、○○赤十字病院などでは、がん治療から救急、災害医療まで広範囲で業務を行ってます。
また日本赤十字社グループは学会発表も積極的に行ってます。
一方、精神科療養、整形外科など単科中心の病院では、薬剤師の人数も少なめで行う業務も限りがあります。
基本的に通常業務を淡々と行い、残業がほとんど発生しない病院が多いです。
こちらも詳細は別にまとめますが、その病院のホームページで診療科、どのような治療を行っているのかなどを調べる必要があります。
200床未満
全国の病院のうち、約70%の病院が200床未満の病院となってます。
実は病院の大半200床未満なんですね。
参考)厚生労働省:平成30(2018)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況
私が現在薬剤部長を務めている病院も、200床未満です。
200床未満の病院ですと、回復期、療養型病院が多くなり、急性期対応や、抗がん剤治療などを行う病院は少なくなってきます。
病院当たりの薬剤師の数は多くありませんが、仕事は調剤、注射剤調剤中心となるので、かなり楽なところが多いです。
当直、宿直、休日勤務がある病院は少なく、仕事も定時に終わることが多いです。
ただ200床の中小病院で注意しないといけない点は、病院内でオーダリングシステム、電子カルテシステムが導入されていない施設が多い事です。
厚生労働省が発表している、平成29年度時点でのシステム導入率がこちら
診療報酬でデータ提出加算が加わったので、令和2年ではもう少しシステム導入率は進んでいるとは思いますが、オーダリングシステム導入でも5割程度でないでしょうか?
システムが導入されていないと、処方箋が手書き運用され、薬袋作成等も手書きになるなど、設備が整っていない事による業務負担が発生する可能性があります。
また、患者情報を十分に確認できないなど、処方箋監査、薬剤管理指導などで苦労する可能性があります。
システムの導入状況に関しては、希望する病院の事務方、薬剤部に確認したほうが良いです。
まとめ:病院の規模、運営方針によって薬剤師の仕事は大きく変わる
まとめます。
今回、病院の規模、特徴によって病院薬剤師の仕事が違うという事で、
- 大学病院
- 特定機能病院
- 国立病院機構
- 公立病院
- 大規模病院
- 200床以上400床未満
- 200床未満
の分類で説明しました。
「病院薬剤師」と薬剤師のジャンルをひとまとめにされてしまいがちですが、規模ごとでその業務が大きくことなることが理解できたかと思います。
自分が理想とする薬剤師像がなにか?
どんな業務をおこないたいのか?
によって選択しが変わってくると思います。
ぜひ参考にしてください。
またこの記事よりもさらに病院薬剤師の就職事情について深く掘り下げる記事を作成中です。
完成し次第アップしますので、その際はあわせてお読みください。